ドライドセフィラー

世界から
わたしの躰が
無くなろうとしていた

幾束もの千年が流れる海流のような大気のした
薄っぺらな
二枚の網膜だけが
取り残されているのであった

時として
── の豪雨や落雷
およそそれ以外のすべてである乾季
石化
風化
多大な風葬
こわい皮膚のトカゲと
その眼球
── に映るまとまった量としての乱雲
乾燥の大地はしる
狂ったようなその
影の群れ

二枚の網膜のうしろ
かつての海馬のあたりに
かつての頭頂を貫いて落ちてくる
ひとすじの落砂がある

水車のようにそれを受ける回転体
それが
おおよそ個としての
わたしの思考
── すべてであった

そのまま
風も吹けば陽射しているこの大地に
音も聞けず触覚もない幾束もの千年が
流れてゆく

或いはこれからも
流れてきた

狂ったようなその影の群れが
大地を風向きで奔流する





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