AMとPM

■AM

有事の際には滑走路としても使われるらしかった
だから道幅が広く
新しくて色濃く
分厚い停止線や中央線がとても鮮やかだ

あたりに人影はない
それなのに
路肩に引かれた白線の上に
溶けたソフトクリームが潰れている
肌色のコーンもはっきりとしたクリームも
濃紺のアスファルト
そして
ガラスビーズを含ませた標識線の境にあり
ヴァニラに噎せ返り見あげると
太陽を中心に六角形が回り込んだ
僕は肉眼で見あげたのに
まるで映画じみている
太陽のすぐ横にブーメラン状の雲が一つだけあり
いつまでもそこに在ったとしたいが次に見上げると消えていた
遠くで動かない薄い山稜を眺めながら
何キロも歩いた

午前中はそんな具合
耐圧機能付きの腕時計を眺めると正午なので
ここでAMを終える



■PM

映画、未知との遭遇のジャケットが昼間で
素晴らしい快晴だったと思ってくれていい
そこを歩いている
陽射しがとても強くて
湿度は低いのだが風がなくて
上着は汗だくでジーンズの腿も貼り付いてて
滝壷にでも飛び込みたいほどだ
滝壷はない
いよいよシャツを脱ぎ
振り回して風を起こすようなことをするがすぐに飽きる
フレームの歪んだサングラスで世界を少し黒く染め
イヤホン式ラジオのオートチューナーを動かした
見慣れない番号でデジタルが止まる
鼓膜のすぐ傍で
ビックバン初期熱がガーガー言いだす
注意して聴くと
中央でパルサーが高速回転し
単一のメッセージを繰り返している

ここまで辿り着きなさい
すべての答えを授けましょう

こう言って婀娜っぽくウインクさえするのだ
だけどどうする?
なにしろ徒歩だもんなあ
まあ
僕は取り敢えず歩くけど

これから別のことを考えるので
ここでPMを終える









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