ルーム(双子のセラフィム)

白夜の季節にその部屋に長椅子とふたり
ふたりは血を分けたふたり
ふたりは性別を分けたふたり

あいての残したトーストの
くの字に折れたミミをつまみ囓るのはひとり
冷めたコーヒーで飲みくだすと
長椅子にゆっくりとたおれ
足をなげる
まぶたの内側を天球儀がまわる
すべての出来事を分けいって
風がいつまでも吹いている

ひとりは白紙のページを眺めている
床板にカラダを伏せていて
その下には冷えた大地がある
大地はそのカラダをどこまでも運んでゆく
白亜もジュラも一時の夢そして
いつしかパンゲアに至るまで

一対の翼でその顔を、一対の翼で躰をかくし
ひろげたのこる一対の翼で空をはばたくのだという
姿を思い描くのはふたり
その間には背合わせの宇宙があり
やさしい静寂が溢れている
黙して体液を交えたあと
ひとりずつ湯を受けてあいてを流した
オピウムの霧がただよっている
ふたりは互いに、違いをみない

時計をみるたびに流れてゆく
なにも得ずに
失うこともない
こうしてただゆっくりと
行為の産みだす一抹の悔いが
くりかえしカラダの重心を
火照らせてゆくだけ

六葉の翼が青に枝をはる

互いに姿を描くけれど
ふたりはそれ語らない

重なる姿を知り得るのは

この詩のまなざし――

ただそれだけ





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