ヒューマソングス

綺麗なソプラノで歌だって唄える
相手が喜ぶ言葉を選ぶこともできる
華奢で瞳の焦点の遠い色白の子が
明け方の月に照らされた
白詰の花叢――
つづら折る獣の径へ
裸足を重ねる
しっとりと冷たい土に
体温を与えてゆく

瘤丘の頂きに招かれたならば
林檎の木の月の木陰に
十字石の墓標が
新月を真上に立つ
画素がこそばゆく頬の先で揺れる
切り花の白百合は
白に見えきっていない
この場面のすべてが
完全な白を思いだせていない

届かないところに
小さな冷えた頑なな鉄球があった
綺麗なもの
優しい理想を描いていても
子にはそれが忘れられず
ましてや
思い出せてさえいないのだ

何億年後かの夜明けの空に
翼で舞い降りる人の似姿が
タンバリンを叩きながら
光の雫を撒き散らす

届かないあの冷えた固まりを
金色の手のひらで抱き包み
歌だって唄い方だって少し変わるし
これまで我々を競わせてきたこの設定値だって
少しはその暖かみを帯びる

何億年前かの夜明けの朝に
子は
そんなことも解らずに
その予感に涙した

そんなことも解らないものだから
すっかりこの涙を忘れてしまい

やがて大人になると

対象の肉体を這いまわり
その挙げ句に子をもうけ

ひときわその何億年後かに
近づいていった





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