アイソトープ

子供が息で膨らませた
緑の
太陽に向かわない風船が
幹線道路の交差点で
いつまでも
踊っている

いつまでも?

あの美しい木々の揺らめきが
緑に輝やいて見えるのは
空から降り注ぐスペクトルのなかから
緑を拒絶しているからだった
与えられた万色のなかから
それだけを
受け入れていない

世界を取り囲む白塗りのフェンスに沿うように
黒猫と白猫が歩いているのだな
と思っていた
黒猫は白猫の影像だった
極地に降り積もる雪もその実は
天から舞い降りる羽毛であったし
この清々しい呼吸でさえ
かつての私たちには毒素であった


嘘の噺を聴いていると
真実よりもその多くが汲み取れることがある

嘘を慰めてあげると
真実に耳を貸したときよりも深い信頼を得ることもある


雪だと思ったのはやはり雪で
羽毛が撫でるように体温を奪ってゆくだけだった

白塗りの壁に挟まれた急な階段を上ってゆくと
子供が息で膨らませたあの風船が向かわない空が
一斉に躰を刺してきた

永遠につづくかと思われたダンスでさえ
それを目に留めた人々の記憶から消えてゆく

あの美しい木々の揺らめきが緑に輝くのも
それらがその色を選んで投げ掛け
固有の色彩を
唄いつづけているのかもしれない

全景に広がった風をともなう鋭利な空には
掻き傷のような希薄な雲ばかりが奔っている
――月面は半身で静か

両手をひろげ
胸を膨らますと
酸が清々しく
体内に凍みている

わたしが
この空を唄い

あなたが
この空を唄ったとして

ときどきメロディーやリズムが重なったなら
それが生きていることの全てかもしれない





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