たったひとりのわたしになって
故郷の浜辺を歩きだす
そこにはわたしの心がない
海は海
空は空
砂もまた
砂でしか在りはしない
傾斜のきつい水際を
おおきな波が駆け上がる
それは億年を隔てたきのう ──
それはカウントを諦めた
遠いあしたに眺める波頭、襲いかかるすがた
願いが生まれるのを待っていた
海は海
空は空
砂は砂、のなかに
理由が生まれるのを待っていた
受け入れて
拒絶して
繰り返し変化を続けよう ──
よりしろとなるものを
いまも始まりを覚えている
海は驚異の音をあげ砕け
空は鮮血を溶き遠くたえず堅牢で
砂もまた、その一粒ひとつぶが
かたくなに堅牢であった
永劫の足取りはいつしか始まりに突きあたる
けれど願っているもの ──
理由として獲得したはずのそれらは
風が風であったあの頃のように
わたしを見つけてくれるのだろうか
すべてを捨てるなら
回帰もできる
海は海
空は空
砂は砂のなかで思い出の風も消える
けれどこの丘に立つならば
地表に散在する
あらゆる対極を直視してみるがいい
繰り返される略奪や搾取が
まるできみが産んでくれたわたしの子のように
美しい
こうして
過度の眼差しを求め
どうじにそれを
恐れている
はじめてしまった地球のうえで
愛や猟奇や安らかな心を
つぎつぎと演じてゆきながら
最後の音色が途絶えるまえに
いつまでもそのオルゴールを
巻きあげつづける ──
── ことをためしてゆく
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