フローラルスタッカート

日傘を傾けた貴婦人が
モネの画質で微笑をよこすフローラルスタッカート
そこからはじまるスタッカート
紫外の彩りも脈動をはじめる

ヒマワリが振り向くと暗色の星座があった
殺戮が神話になる瞬間の嘘が――
美しく調和していた
陽を追い
日を追い、
月の静けさに、恋い焦がれる

男はバラのその花弁をくちびるで噛んだ
耳たぶを噛んだ
そしていまはそれを噛んで、
蜜を吸い――
喉を鳴らし飲み下した
緩慢な渚に撫ぜられる軟鉄の放熱――
頬骨のラインに、満ちていた

モクレンの香りが鼓動をおさめた
つめたい、
まるで五月の空のような血圧がああ
夜空より明るい雲――
とても低く、流れている
いつまでもこのままがいいのに
灰とその哀れな砂が、月齢の容積に満ちてゆく

凪いだ海洋を姿がすべる
誰が櫂を、
漕いでいる
だからそう
海はいつまでも満月の懺悔――
月影が全身につたう体液を
甘美なその葡萄酒に換える
舟梁に赤いカーネーションの切り花がよこたわる
満月の臭気が、
その自己愛に麝香をそそぐ

商人も自らの善悪を売って
前人未踏の砂漠を越える
その物語にも当然ドラマが――
人々のそれと等価である
スミレを狩る売人が
スミレを狩る生涯の、
傷手に死をえた
つぎの商人が
遠い大陸から海を越えようと
水平線を見すえている
それにいま
見すえられる
手の平に握られるのは親を売った端金――
それにいま、
見すえられる

女は嬰児の一笑に
開花という瞬間を正確に
トレースすることができるのだった
だから女は美しかった
この人類すべてを根絶やしにしても赦されるだろう
神秘を当然と纏っていた
赤子かシラユリの花束を抱いていた
シラユリの花束か、
赤子の無防備な笑みを抱いていた
彼女たちが生き延びればいい
彼女たちが生き延びれば
すべての渇水は
物語のなかで実りをえる――
キミたちを次々と殺しながら
物語は、美しく

絶え間なく流れている
風がはじめた言葉のように
咲き誇る
花が咲かなければどうなるのだろう、
ねえ?フローラ
息を弾ませることさえも
ないのだとしたら

キミたちに嘲笑されたい
たとえば――
どれほど殺しても咎められない
真実の正義とか
欲を言えば愛とか
それともそれらを護るための
なにか超然とした――
たとえば野花とか

ジオイドをあらゆるその花弁が埋めてゆく
大地の匂いを
そのそれぞれが振り分ける

ボクは幸せさフローラ

世界でいちばん――

幸福な、

眼差しなのさ




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