HAPPY ENDING

シーン 87(早朝の城下町)
※視点は路地裏を抜け
酒樽の積まれた引き車を掠めると
朝陽の光芒へ
スタート//

鐘楼尖塔の鐘が鳴り
鐘の動作に光が射す
街鳩は蒼穹をのぼり
尨犬が少年と駆ける

さあさハッピーエンディングの時間です
大好きなあの服を
戸棚から下ろしましょう

ハンチィングの少年が号外を投げる
階上の夫人が紙吹雪を投げる
奇術師がその技でナイフを投げるならば
物理学者も重力を忘れ
しばらくは匙を投げる

さあさハッピーエンディングの時間です
とびきりの元気を用意しましょう

道化:さあ、お嬢さん、
      戸口の石段に腰掛け泣き続けていては駄目です
町娘:一座を離れた道化の御方、
      ああ、私はあの人のことが忘れられないのです
道化:では、このチョコレートはいかがかな?
      香酒入りで頬が落ちますよ

辻馬車が駆ける
富豪の令嬢が朝陽を見あげ
わけもなく欝を忘れる
鼠が舗石を駆ける
物乞いの男が朝陽を見あげ
その日々を忘れる

門番:はたして倅めは今頃どうしているだろうか
馭者:あの一張羅だけは手放したくはないわい
花屋:今晩の献立は何がよいかしら
役人:まったく昨今の町民ときたら困ったものだ
尨犬:ワン、ワワン
道化:皆さんこの踊りはいかがかな?片足でこのとうりでござい

町娘が息を留める
道化は投げていた手鞠を落とす
目を回し大袈裟に倒れると
子供たちに囲まれて
笑いながら起こされる
娘は呼吸を忘れている
子供たちの声が溢れだし
野花を摘んだあの日々へ
少女の頃の――
あの日々を

場面のそで
先から一言も発してない哲学者が
手にする分厚い写本を閉じ
紙の清潔な匂いを撒いた
それが早朝の大気をのぼってゆく

さあさハッピーエンディングの時間です
皆さん準備はできましたか?

さあさハッピーエンディングの時間です

世界中が幸せです


そうに決まってるんです




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