ラヴァーズ

風が鳴って
遠い地に落ちた影が
手に
手を
差し伸べると
触れたときの感触が
この手にある

「半音だけ」

胸にあるものを植えるのか
風にかえすのかを迷うときに
見ていたものを追いぬいてゆく波形のながれ
メロディーが無数のつばめとなり
ひたいに一言を置き去る者と交わるとき
視力をなくした者と
言い方をおぼえた者とが手をつなぎ
触れあった温もりが弦楽になるのを
月齢がみちるのを
待つように
懐かしむ

きっとだれもが
水をやることに惜しみなくて
海はおおきく
ちいさな鍵をどこまでも隠しながら
裁かない者のありていをまもり
水をつぐことを
沈黙であるからこそ
意味づける

「ユートピアへと、赴くために」

花になるものを植えた人に会う
花が咲いたならそれだけでよくて
地脈はとてもやさしくて
わたしとわたしの配列だけが
いつも決まって
難しい

野花をつむ衝動を称える

なにかを心なく

殺せるように

花をつんだ子が

花のように

笑えるように

天をその波形がながれ
地にはヌーやシマウマの群れ
手のひらのうえに浮かぶちいさな雫が
温もってこの地球になるように

いつまでもわたしたちの手のひらで
正確に結晶するように

愛の背負った残酷さが
あなたをまるで虫けらのように
殺せるように




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