アルテミス

上からの波に照らされて
美しい傀儡に填め込まれたきみの眼球が受けとめる ──
地平線で熱になった真昼がひとつ
ヴィブラフォンの静かな狂騒が沸きたたせる
刺すような
すり抜けるような
あきらめの朝がひとつ

その眼球はエウロパの温かいみなそこに沈んでゆく
尾ひれのようなものを靡かせていて
息をのみ ── なにを見ているの?
オブシディアン となりあうバクテリア 氷の軋轢が遠くきこえ
動かない水圧のなかで忘れられる
束の間のプレイデッド 

この地球の ──
乾ききったノイズがいま
肩ぐちに泡だつ
真理のいくえにも擬人化された時代を追って
ながれる雲はどんな地図の上にでもその手をかざすのだけれど
糸杉の立ち並ぶまっすぐな道をいつか見た人が歩いてゆき
その絵と結びつかない囁きはそう ──
ねえ?空は切り取ってしまうと一瞬で死ぬのに
時はとこしえが身籠もった初めてのイノチなのに
── むこうから来る人といま笑みを交わしあって ──
答えはいつも砂礫へ砂へ
唄い継がれて
ゆこうとするだけ?

きみが着た白いドレスが
忘れてしまうみなそこで
オーロラにみまがう
温かい水圧に照らされている
息をはこうとした瞬間 ──
それはこの地球のテーブルの上で気づきだされ
のされた虹をさかのぼりそして
まなざしの中で
空へとかえる

 優しいことで流れたものは
  なにもかも超えてあの海にかえるの

 あなたの克服したことはそう
  輪の水の通り道になってゆくの

空は見あげるとイノチを深め
時は背界(はいかい)の賛美歌を衝動にして
見ていたことや
唄ったことの胸飾りをやわはだに
とこしえのくれた狭間の夢を
慈しんでくれる

きみは振り返ると睫毛を伏せる
硬く尖らせた乳首のひとつを
微笑みと共にむかわせる

迷いのない
愛らしい笑い声がいま
野に溢れ
ペールトーンの山間をも埋めてゆく
おくるみのなかで力ない手が
つめたい
ちいさな空を掴もうとして ──

(それは掴むと死んでしまうのに)

── そしてそう
わたしはきっとこれからもけして
だれひとりとして
かなしくはない




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