白金の断章


音のない光のすりぬける
いっぱいの葉がはこばれて
あたたかいつばさの 翻り ちらかったカラス
薄くなる景色や首筋に巻きついた髪と
あのころにやさしくしてくれた瞬間の
手で描いた斜線の絵

大地の真ん中を歩いていると
心から情欲が剥がれていった
冬の田園だった
あのことが生まれたがっていて
産まれるとどうなるか つたえられずにいた

生まれたら終わるまで止まらない
駄目にしたり良くしたりもする
裁かれたり裁いたり
きれいなソプラノで唄ったり
多くを傷つけて無駄をする

木陰で傷ついた膝を抱えては
遠くに耳を傾けたりもする
端についたシロップを舐めながら笑ったり
撫ぜられるのに叩かれると思いちがい
目を閉じて
首を縮めたりして

もとにもどりたいなんてことを
なかなか思い出せないでいる

とても泳いだあとの島は
わたしたちのものだといつも思う

小さなこどもにもどったら
ちがうやりかたで覚え直す

小さなこどもにもどったら
オレンジのグミが好きになる

いろんなやりかたを試してゆく

試し
間違え
小さなこども
欲しいものを眼に映し
輝かす

駆けてきてころぶ
どちらにしようかと迷うけれど
泣かないで笑って
立ち上がる

どんなに背伸びをしてみても
プラチナの空がとても高い

どんなにその場で泣いたとしても
プラチナの空にとられてゆく

こんなにつめたいとこなのに
ふれるとほら ぬくもってる

とてもはかないとこなのに
ふれたらほら ぬくもってる

その手とつつむ手とを抱きあわせて
手のなかにあるての字を
爪の尖でなぞったりして

笑ったりして

そしてそのまま
いい夢をみる眠りを
眠ったりして




――追伸

風のうるさい背負われた眠りと 
運ばれてなくなるうた
呼ばれる名前――
あきらめる声
手の平がやさしく叩き
歩調に
揺れている空へ

そして記憶は舞いあがり
これを最後に もどらない

すべてはきっと
いつか必ず
赦されるはずだから



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