Mayの随想

座標を示すナンバーの打たれたコンクリートタイル
覆われた全ての地表
わたしの視点の高さの上は
永遠に浄化を止まない
メイの空


 E0652847 / N0457828
 サイドテーブルの上に置かれた
 クラリネットの光沢を思い出します
 きみとの再会を思うとき
 背後から囁かれた
  綺麗な声

 E0622548 / N0457890
 わたしに問いかけるきみのリプレイ
 気の利いた返答に
 くちもとから
 ゆっくりと微笑むきみのリプレイ
 耳元を過ぎる風音は
 五月のそれ


地平線に包囲されたすべて
グレイの上に
縫いつけられたメイの空
ひとつだけの眼差しを
底知れぬな奥行きで塞ぎ込む
それも眼差しのように
不可逆的な風が吹き
そうやって過ぎてゆく
幾千の空
トキの数え方を忘れてゆく


 E0596578 / N0478513
 きみにしてあげられた優しさのひとつを
 胸に遺したままでいることの後悔
 それがきみのためだからと
 偽善を振る舞ったことへの後悔
 清算の皆無

 E0594275 / N0479621
 行楽の荷造り
 バスケットに詰め込まれてゆく幾つもの楽しみ
 なにかおかしなことを言ったね
 いろいろな表情が
 メドレーで繰り返す


世紀を跨ぎ続いた旅
あるいは
夜明けとともにはじめたばかりの
一瞬の旅
灰色一色に塗り潰された惑星に一点
その許される限りに
枝葉の経路を構えるという
唯一の
木陰のもとへ
思い出のきみを
思い出を水に
静かに浸し
溶く
溶きながら心を解く
足を止め
呼吸を無くし
メイに会して
瞳を閉じて


 E0555556 / N0555554
 円形に刳り抜かれたコンクリートタイル
 すこしだけ盛り上がる大地のサークルに
 立ち上がるイロハモミジ
 この星で唯一の樹木のした
 幹に背凭れ
 膝に載せた書物を開く
 きみの屍
 わたしは
 五月の風に耳朶を叩かれながら
 わたしは佇み
 きみをみている

 ----------May----------
 緑色に着色された
 子供たちの手のひらが重なっている
 重なると色を深め
 ときどき途切れて
 陽射しをよこす
 わたしはきみを見おろしたまま
 ただ一言
 やあ
 といった
 となりに並んで腰掛けると
 わたしの肩に寄りかかりながら
 崩れた頭蓋が音をたてた
 初めての再会だというのに
 言いたいことはひとつもなかった
 きみがいったい誰だろうという疑問が
 わたしに向かう同じ問いとともに溶けだしてゆく
 頭上では
 風にざわめく
 枝葉の触れ鳴り
 
 木漏れ日は降り注ぎながら
 このとき光の
 
 音をたてる


わたしはゆっくりと屍になる
 時間を忘れ
  幻想と記憶を刺し違え
   ここで風化する
    物質と反物質の相互消滅をなぞらえながら

       そう
       やがていまきみがそうしいるように
       メイの空に舞う







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